2010年5月23日日曜日

ばらばらなぼく

第一章 ポロリ

 ぼくは気づいたらバラバラになっていた
 文字通り

 今あるぼくの意識が
 本物なのか
 偽物なのか
 あるいはこれはただの夢なのか

 できれば夢であってほしい


 そう願うけれど
 文字通り
 ぼくの体はばらばらになっていた
 足の付け根 腕の付け根 首
 それぞれがポロっと分離して
 胴体から切り離されて床に落ちていた

 寝ていた時に分離したらしく
 人型、仰向けのままに
 足、腕、首がポロっと落ちていた




 ともかくぼくにわかることは
 「もう 元には 戻らない」
 ということだった


 体がばらばらになっていたから
 手を動かそうとしても
 ぼくの想いはそこにある手には届かず
 指を曲げようとしても曲がらない
 膝を曲げて足を立たせようにも力は入らず

 そもそも
 足が付け根からポロッと取れているんだから
 動きようがないし
 たとえ足だけ直立したところで
 どうしようもない

 意識が残っている頭は
 首からポロリととれているし

 目や鼻が福笑いみたいにパーツごとバラバラになっていないだけマシだが

 口は動かず
  声も出ず
   音も聞こえず
    匂いもなかった

 虚無だ
 ああまっこと虚無だ




 もはや
 自分の意思の届くものは何もなく
 自分が動かせるものは

  なに も なかった

Popular Posts